蟻のように歩んできた長年の経験を,今ようやくまとめることができて,安堵しています。
 私とイメージ療法との出会いは,九州大学での恩師成瀬悟策先生の催眠研究会に始まります。当時はまだ臨床経験も浅く,十分に自分のものにすることができないでいました。その後,広島修道大学学生相談室で田嶌誠一先生と仕事を共にさせていただき,壺イメージ療法と出会いました。心理療法の数あるアプローチの中で,イメージ療法を自身が使える技法として身につけてきたのには,数々の偶然と必然が働いてきたのだろうと思います。進路に迷っていた10代後半に,書店で偶然手にしたエーリッヒ・フロムのTHE FORGOTTEN LANGUAGE ?As Introduction to the Understanding of Dreams, Fairy, Tales and Myths.(『夢の精神分析――忘れられた言語』)に魅かれ,臨床心理学の道に進む決心をしました。実は,長い間このことを忘れていて,本書の最終章を執筆中に記憶が蘇り,若かった頃の偶然の選択が,底流では脈々と今に繋がっていたことに気づかされ驚きました。
 今までに私を導き,支えてくださった諸先生方,仕事を一緒にしてくださった方々,また学生のみなさんに心よりお礼を申し上げたいと思います。
 臨床心理の仕事は,クライエントとの共同作業で成り立っており,専門家はクライエントによって鍛えられ,育てられるものです。心理臨床家が一人で何かを生み出すことはできないという意味で,本書は私が伴走させていただいた多くのクライエントとの共著と言えます。本書への掲載の許可をくださった方々に,心より感謝の意を表したいと思います。お会いできる範囲の方には,原稿に目を通していただきましたが,直接許可を得ることのできなかった20年から十数年以上前の事例については,個人情報の記載にできるだけの配慮をいたしました。なお,イメージ画は,すべて報告を基にした筆者の手によるものです。

 最後になりましたが,本作りのイメージを共に練ってくださった金剛出版社長の立石正信氏に心よりお礼を申し上げます。

2015年初冬 定年退職を前に
福留留美