『双極性障害のための認知行動療法ポケットガイド』

ルース・C・ホワイトほか著/佐々木 淳監訳
A5判/200p/定価(3,000円+税)/2016年3月刊

評者 甲田宗良(琉球大学大学院医学研究科精神病態医学講座)

 双極性障害は,気分の波を主症状とした精神症状や社会生活機能障害が生じる疾病である。双極性障害に対する認知行動療法(CBT)は,うつ・躁症状・社会機能の改善,服薬アドヒアランスの向上,入院期間の短縮,再発までの期間の延長,前駆症状に対する有効な対処方略の獲得,セルフスティグマの低減など多面的な効果を発揮する。
 本書は,双極性障害のためのCBTについて解説された書籍の邦訳である。原書は“Bipolar 101 : A Practical Guide to Identifying Triggers, Managing Medications, Coping with Symptoms and More”であり,Challenge the CBTシリーズは,CBT実践のコツを平易かつ具体的に紹介している。このスタンスは本書でも踏襲され,訳書であることを忘れる表現に溢れている。監訳者の佐々木先生や訳者の先生方の昼夜を問わない渾身の翻訳作業が窺える。
 本書は全9章(原書は10章)で構成される。「はじめに」では,双極性障害という疾病を受け容れることや治療を継続することの困難さに触れつつ,本書のエッセンスを学ぶことで,気分の波と付き合っていくことは可能であると励ましてくれる。著者の一人Ruth C. White博士自身が双極性障害の当事者であり,彼女“だからこそ”のメッセージである。
 第1章「双極性障害を理解する」,第2章「治療を受ける」,第3章「薬を飲む」では,疾病を正確に理解し,自ら問題にコミットし,適切な治療(者)に繋がるための方法が解説される。クライエントが早期に受診・治療開始に至るよう,背中を押している。第4章「症状の引き金を見つけ気分を追跡する」,第5章「ストレスを最小限におさえる」では,クライエントが自身の認知・感情・行動に気づき・対処するための方法および実践の細かい工夫が紹介されている。CBT実践にありがちな困難の乗り越え方にも言及がある。さらに,第6章「たっぷり睡眠をとる」,第7章「運動を習慣にする」,第8章「適切な栄養とサプリメント」では,疾病と付き合うために必要な生活の仕方を,説教臭くない温かい言葉で教えてくれる。最後に,第9章「サポートシステムを築く」は,疾病のカミングアウトからサポート資源の活用まで,クライエントが「自分は一人ではない」と思える情報が満載である。
 本書は,全編にわたって,ACTION STEP と称される行動課題やセルフモニタリングの資料が豊富に含まれている。そして,しつこいほど頻出する「治療者と相談を」というフレーズは,CBT の協働的実証主義(Collaborative empiricism)を体現している。CBTの基本に忠実で,小手先のテクニック“ではない”ところを大事にする本書は,双極性障害に留まらず,気分の波のために困難を抱えた方々やその支援者に必携の一冊である。