『心理検査を支援に繋ぐフィードバック−事例でわかる心理検査の伝え方・活かし方[第2 集]』

竹内健児編
A5判/230p/定価(3,400円+税)/2016年9月刊

評者 千葉ちよ(東京医療センター精神科)

 心理検査のフィードバックの仕方やその後の活用について事例を通して詳述している本は僅かである。前書『事例でわかる心理検査の伝え方・活かし方』(2009)は心理検査のデータだけでなく心理検査報告書が掲載されており,スタッフへの報告や受検者へのフィードバックのやりとりを逐語でたどることができる,貴重な参考書であった。その内容は,心理検査の実際を知りたい初学者,心理検査の活用に悩む中堅心理職,臨床教育にあたる指導者層,心理検査を依頼する医師をはじめとした他職種にとって,臨床場面が具体的に生き生きとイメージできて役に立つ事例集となっていた。この形式は本書にも引き継がれている。
 編者は,心理検査を用いた心理アセスメントの過程全体を「一つのストーリーとして詳細に検討していく」ことを意図しており,8人の事例執筆者は臨場感あふれる詳述で期待に応えている。職場や職務の紹介から始まり,事例の概要,検査実施までの経緯,検査実施時の様子,検査結果のまとめと理解,スタッフへの報告,クライエントへのフィードバック,その後の経過が時間の流れや所要時間も含めて記され,事例の振り返り,考察へとすすむ。検査者側の心の作業も含めて記述されているため,読者も検査者の体験をたどることができる。それは検査者と同じように戸惑い,迷い,不安や疑問に耐えながら手探りですすむ過程である。
 医療領域に限らず,心理職に求められる専門業務の中心は心理アセスメントであり,心理検査と心理療法の知識と技術は必須である。しかしそれ以前に職場での接遇,各職種の役割,心理職に求められている役割を意識しておくことが他職種との連携や協働には欠かせない。心理検査の実施方法や解釈を学ぶ場所は確保できても,その職場で心理職としてどのように在ればよいのかを教わることは難しい。8人の事例報告は心理職としてそれぞれの職場にどのように適応してきたのか,その背景にかくれている葛藤や苦悩までも透かしみえるようで励まされる。これまで知らなかった職域での心理職の活躍や心理検査の活用を知ることもできてとても参考になった。
 各事例にはベテランの臨床家が検討を加えている。公開可能な限られた資料から,受検者を取り巻く環境までを推察した臨床像と心理検査結果との照合を通してその人らしさを紡ぎ出していく深い考察と豊かな言語表現は,それ自体がフィードバックの伝え方・活かし方へのヒントになっている。他職種との関わり方,心理検査の選択・実施方法や解釈に関する鋭い指摘,フィードバックセッションの構造に関する考察など,日常の臨床にすぐに取り入れたくなるアドバイスから自分でじっくり答えを探していく問いまで示唆に富んでいる。心理職のみならず,心理検査のフィードバックに頭を悩ませている他職種,特に患者や家族,他職種とのコミュニケーションに苦労されている若い医師の皆様にも推薦したい。