あとがき

 本書は,元々は世界的経営コンサルタント会社にて“コンサルタントのコンサルタント”として携わる中編成した「ストレス・マネジメント&ヘルスケア体系」が基盤になっています。この体系の成果により,多くの組織における人財管理や労務・健康管理水準は飛躍的に向上しました。うつ病による休職者ゼロを達成した東証一部上場企業も出たほどでした。そこで医師向けの専門書と人事労務管理者に向けた専門誌で紹介したところ好評でした。
 一方,出身大学の入局した先である産業生態科学研究所からは,私が医者になってかれこれ20年になるのですが,その間,3人もの後輩が自殺していました(一人は乳飲み子を遺して)。うち一人は,医学部時代,メンターをしていました。自殺どころか,抑うつ性障碍とは無縁と感じるしかない方でした。一人は自殺する一週間前に,私に電話をかけてきていました。あのとき,気が付いたらと反省の日々を送っております。反省するだけではなく,自身を題材に,運動によるメンタルへの好影響を,特にスキーにて検証しています。食事とメンタルとの関連についてはお茶の水女子大学大学院赤松利恵教授一門と共同研究を実施してもらっており,国際誌に掲載されるような最新知見が得られ始めています(参考文献に挙げてあります)。また,クライアントが学業や職場に無事に復帰するための支援のノウハウを世に広く紹介できるようになったら,同じような辛い気持ちで苦悩する方が出ることを防止できるのではないか?! いや,それを為すべきだと考え,わずか36ページにもかかわらず30万円かけ『職場のメンタルヘルス メンタル不調者と支援者のための 休職・復職ガイドブック――復職後も元気に働き続けるため』にまとめ自費出版(2016年1月18日初版発行)しました。それを契約先や精神医療関係の専門書を扱っている出版社に献本し始めました。三社献本したところで効果はないなと諦めていました。5月に入り金剛出版の代表取締役立石正信様より,産業精神保健には多くの課題があるから,専門職や当事者・家族がわかりやすく読めるように,加筆修正をしてみては?との提案をもらったので,こうして刊行の運びとなりました。多くを解決する前に,まずは,「抑うつ性障碍による休職者が再発することを少なくしたい!」「新たな自殺発生を防止したい!」と考えていらっしゃる方に,科学的根拠という理論面だけではなく,現場で実際に効果を検証した効果的方法を,本書を通じて実際に提供できるようになったことは幸いです。

 最後に,キャリアコンサルティング事例を教えて下さった産業カウンセラーの田村隆氏,自らも罹災者ながら熊本の地で震災罹災者の心のケアに邁進されている精神保健福祉士福島弘達氏には発達障碍者支援方法を教えてもらいました。この場を借りてお礼申しあげます。

2016年 6月
櫻澤 博文