『グループスキーマ療法−グループを家族に見立てる治療的再養育法実践 ガイド』

J・M・ファレル,I・A・ショー著/伊藤絵美監訳,大島郁葉訳
A5判/480p/定価(6,200円+税)/2016年11月刊

評者 日下華奈子(東京大学)

 第三世代の大きな流れとして発展し,かつBPD治療に効果を示してきたスキーマ療法から,グループという枠組みを適用したグループスキーマ療法(GST)の治療マニュアルが,このたび監訳者らのなみなみならぬ努力により日本語で刊行された。
 本書は,境界性パーソナリティ障害(BPD)を対象としたグループスキーマ療法の治療マニュアルである。と,こうさらっと書いてはみたものの……本書は骨太で筆者らのたゆまぬ挑戦が,分厚い記述から伝わる内容となっている。
 「なぜグループなのか?」「グループを家族に見立てることって?」というこれらの素朴な問いに対して,丁寧にそれらに応えてくれる内容となっている。さらに治療の場ではやっかいな患者さんとして捉えられることの多いBPD 当事者を理解するうえでも大変参考になる一冊であることもあらためて付け加えておきたい。筆者も強調しているように,GST(グループ・スキーマ療法)と他のグループアプローチの違いは,グループが,スキルトレーニングの場としてのみ終始しない,関係性を利用して不適切なスキーマに介入するための治療プログラムの工夫が説明されている。具体的には,参加者の関係性の相互作用や個々人の持つスキーマの各発達プロセスを考慮しながら進めていく点と,グループモデルの構成要素や積極的な特徴(グループが持つピアの力と,凝集性が高める協同意識など)と,道具的なグループモデルの構成要素「認知的ワーク」「体験的ワーク」「行動パターンの変容のワーク」を包括的に組み合わせている点にある。だからこそ,GSTにてセラピスト(ら)に求められる役割は,積極的にグループを先導するために「よい親(両親)」としての役割を担うことである。なぜなら,BPD当事者の中にはこれまで得られてこなかったと捉えているために,より強く欲する「健全な家族」という安心した枠組みを提供できるからである。なるほど,これらを鑑みれば,GSTが「健全な家族」というメタファーを利用していることも自然な流れであること,その背景にはGSTが「治療的再養育法」を重視している点も理解できる。
 最後に今後のGSTのさらなる発展を期待して本書への意見を2 点述べる。
 1点目はドロップアウト事例,または特徴についての記述があると今後,適用を検討するうえでより参考になるだろう。
 2点目は親役割を担うセラピスト側についてである。「よい親」「あたたかい親」といった役割をセラピストがGSTでとるときに,セラピスト自身がもつこれらの参照枠についても重要になってくるだろう。一口に「よい親」「あたたかい親」を求められたときに,実際にどう振る舞うかは,実はセラピスト自身の「家族」体験も多分に影響されるためである。そのためのトレーニングや考察についても今後期待したい点である。
 最後に,本書は監訳者らの努力と熱意に支えられている,その点にも敬意を払いながら今後,GSTがより多くの場で適用できることを願う。

原書: Farrell JM., Shaw IA : Group Schema Therapy for Borderline Personality Disorder:A step by step treatment manual with patient workbook