The Basic Falut:1968

M・バリント著/中井久夫訳

新装版 治療論からみた退行

A5判 292頁 定価(本体5,800円+税) 2017年5月刊


 
 

ISBN978-4-7724-1557-6

 本書は,力動的立場をとると否とを問わず,「境界例」をはじめ困難な精神科臨床にたずさわる人々に欠くことのできない実践的英知と心構えを示すものである。
 著者バリントは,欧米ではじめて土居の「甘え」理論を取りあげた学者として知られ,、また内科医との共同作業による心身医学の領域でも名高い,しかし彼は1920年代にはやくも対象関係に注目し,ブダペシュトからイギリスに移ってからはその地に興った対象関係論の推進者としても活躍をつづけた。とりわけフロイトの古典分析の限界を超える患者の治療を志して途半ばに倒れた師フェレンツィの遺志を継いで,そのような患者の特徴を対象関係論的に「基底欠損」と把え,その治療論を展開,従来否定的な面のみが論じられていた「退行」の治療的意義をも発見する。
 該博な知識と言語に対する深い造詣で知られる訳者を得て,本書は近年とみに重要性を強調される重症患者への精神療法的接近に新しい視野を拓いてくれるであろう。

おもな目次

まえがき

第一部 心の三領域

  • 第一章 治療過程の心的局在論
  • 第二章 解釈と徹底操作
  • 第三章 分析作業の二水準
  • 第四章 基底欠損領域
  • 第五章 創造領域
  • 第六章 第一部の要約

第二部 一次ナルシシズムと一次愛

  • 第七章 フロイトの三理論
  • 第八章 前章の三理論が内包する矛盾
  • 第九章 ナルシシズムの臨床観察所見
  • 第十章 分裂病,嗜癖などの病的ナルシシズム状態
  • 第十一章 出生前および出生後初期状態
  • 第十二章 一次愛
  • 第十三章 成人愛/第二部を要約すると

第三部 深淵と分析者の反応

  • 第十四章 退行と<患者の中の小児>
  • 第十五章 育児と分析治療とにおける言語問題
  • 第十六章 古典技法とその諸限界
  • 第十七章 整合的解釈に内在する危険
  • 第十八章 退行の管理に内在する危険

第四部 良性の退行と退行概念

  • 第二十章 症状と診断
  • 第二十一章 欲求充足と対象関係
  • 第二十二章 治療的退行の種々相
  • 第二十三章 フロイト=フェレンツィ間の不一致とその後遺症

第五部 退行患者とその分析者

  • 第二十四章 治療的退行,一次愛,基底欠損
  • 第二十五章 押しつけがましくない分析者
  • 第二十六章 深淵に架橋する

あとがき 文献 マイクル・バリント主要著作