菱田 繁監修/山村武彦,木下博之編著

犯罪捜査科学
捜査・取調・法医・虚偽自白・無罪判決の考証

B5判 280頁 定価(本体10,000円+税) 2017年8月刊


 
 

ISBN978-4-7724-1569-9

 戦後,第一次捜査権が負託された警察捜査機関は,犯罪に関わる科学知識ならびに科学技術を導入した客観的・合理的な捜査活動の推進を実践してきた。近年,精密司法の徹底と裁判員制度の実施に伴い,犯罪と犯罪者への対応に新たなる視点からの科学的手法に基づく犯罪現象の究明が一層指向されなければならないこととなっている。
 本書は,こうした犯罪および犯罪者への理解と解釈について,捜査・取調・虚偽自白・無罪判決といった犯罪捜査活動の変遷を実証的に考証したものである。
 犯罪捜査科学の成り立ちにはじまり,犯罪捜査に欠かせない法医学の発展について,これまでの歴史を辿り,写真,血液型,筆跡,DNAなど個人を識別する技術の発展を中心に犯罪科学の歩みを解説する。続く各章では,中世からの取調方法の変遷と現代における各方法の比較とその運用の実際が詳述され,虚偽自白についてもその客観的真実性を判断することの重要性が示される。最後に刑事裁判・無罪判決・再審について,多数の事例を通して問題点が述べられた上で,精密な科学的捜査の必要性が説かれる。
 裁判官・検察官・弁護士をはじめとして,犯罪捜査の研究教育に携わる法律の専門家,捜査活動に従事する実務家,さらにはこれらの活動への参画を意図している篤学の士に向けた実践的基盤となる一冊である。

おもな目次

序章

第1章 犯罪捜査科学の成り立ち

  • 1.犯罪捜査体制の推移:第一次捜査権・捜査体制の充実強化・吉典ちゃん事件・狭山事件・刑事警察対策要綱・警察庁重要指定事件・捜査指揮と組織捜査・集団の圧力・アイヒマン効果・監獄実験
  • 2.犯罪捜査技術の進展:捜査技術の充実・指定105号事件・犯罪理論の変遷・犯罪捜査の勃興・捜査の基盤

第2章 法医学の発展

  • 1.犯罪捜査関連の自然科学の発達:医学生物学の流れ・生命観の変遷・医学の起源・遺伝学の基礎・分子生物学の発展
  • 2.法医学の発達:萌芽時代・エジプト・古代バビロン・インド・中国・ペルシャ・ギリシャ・ロ―マ
  • 3.中世時代法医学:法的未開・イタリア初期の発展・フランス初期の発展
  • 4.16世紀後期法医学:ドイツ初期の発展・イタリア・フランス
  • 5.17〜18世紀法医学:神判との別離・肺浮遊試験・昆虫学の発生・法廷への医学証言・カウパーの事件・ルイの貢献
  • 6.19世紀法医学:フランスとドイツ・イギリス(バ―クとヘア事件)・イギリスの法医学教育制度
  • 7.20世紀法医学:アメリカの発達
  • 8.日本の法医学:明治以前・明治以後・法医学教室創設・主要鑑定事件・法医関連諸問題・法医学的責務・法歯学
  • 9.法毒物学:毒殺抄史・男性毒殺者・女性毒殺者・毒物鑑定抄史・仮死症状
  • 10.法精神医学

第3章 犯罪科学の歩み

  • 1.犯罪科学抄史:犯罪科学の登場・犯罪科学捜査の充実・犯罪科学技術の現況調査
  • 2.犯罪科学技術の諸相:法弾道学・犯罪者特定(犯罪人説)・顕微鏡術・写真技術・個人特定(ベルティヨン式身体測定法/指紋法/血液型法/DNA型法)・ポリグラフ・犯人像推測技術・微物同定・文書筆跡・医療器具・検屍活動・スーパーインポーズ・複顔・復顔

第4章 取調技術の変遷

  • 1.取調技術抄史:中世・近世・1960年代以降
  • 2.取調方法の比較:種々の取調方法(一問一答型/説得型リード方式/倫理型/探索調査型(PEACE方式)/会話管理型/会話指示型/用語選択型)・諸方法の相互比較・事情聴取と面接・説得行為による取調・取調過程
  • 3.取調方法の検討:リード方式九段階方式の社会心理的解釈と問題点・リード方式九段階方式とPEACE型五段階方式との違い・会話導出法(イングランドとウエールズおよびオランダの状況)
  • 4.取調の諸事情:取調の目的・日本の実情・本邦の取調指導書・取調官の適性・取調官の態度・取調官の教育と訓練・取調の失敗・自白結果の影響力・被疑者の自白率と自白理由・拷問

第5章 虚偽自白の実態

  • 1.虚偽自白の歴史的展望:ミランダ判決・虚偽自白の事例研究
  • 2.虚偽自白の諸相:虚偽自白の発生機序・虚偽自白の影響・虚偽自白の司法的判断・虚偽自白の有罪率・虚偽自白の識別・無力な被疑者の識別・虚偽自白の防止策・取調の可視化
  • 第6章 刑事裁判・無罪判決・再審
  • 1.刑事裁判:証明・証拠法・証拠・実質証拠・推定無罪・裁判官・裁判官の資質・検察官・検察官の構造的欠陥・陪審員・裁判員
  • 2.無罪判決:死刑執行後真犯人判明・刑確定後真犯人判明・犯罪構成要件不成立・証拠不十分・証拠捏造・証拠隠匿(隠滅)・人証不適切(被告人)・人証不適切(被害関係)・人証不適切(共同被告人証言)・人証不適切(関係目撃者)・鑑定・精神鑑定・現場検証不徹底
  • 3.再審:白鳥決定・死刑確定後無罪・無期刑および有期刑確定後無罪・再審請求死刑確定被告人死亡例・再審請求無期および有期刑確定被告人死亡・再審請求特異事件・控訴中被告人死亡特異事件

終章