松本拓真著

自閉スペクトラム症を抱える子どもたち
受身性研究と心理療法が拓く新たな理解

A5判 240頁 定価(本体3,800円+税) 2017年11月刊


 
 

ISBN978-4-7724-1586-6

自閉スペクトラム症を抱える子どもと青年、およびその家族は何を体験しているのか? 自閉スペクトラム症のイメージは「マイペース」「空気が読めない」などと言われるが、実際はそうではない。本書では、自閉スペクトラム症の特徴を解説するのではなく、著者が心理療法を通して聞いた、その人たちが何を感じ、何を思っているのか、という心の声を描き出していく。

おもな目次

はじめに

  • 第1章 自閉スペクトラム症の子どもに必要なこと

  •  第1節 問題のない子どもに育てたいか,幸せな子どもに育てたいか?
  •  第2節 ある出会いから私に生じた疑問
  •  第3節 なぜ子どもの問題は母親のせいと思われてしまうのか?
  •  第4節 子どもの意志や感情が見えなくなるという問題
  •  第5節 心理療法が自分を知るための取り組みだとして,何の意味がある?
  •  第6節 心理療法は自閉スペクトラム症を治すわけではない
  • 第2章 自閉スペクトラム症の一般的な理解:「相手が見えない状態」
  •  第1節 自閉症概念の歴史と変遷
  •  第2節 自閉スペクトラム症に共通する特徴
  •  第3節 自閉スペクトラム症を抱える人にも様々な性格がある
  •  第4節 自閉スペクトラム症の人との関わり方の3つのパターン

第1部 自閉スペクトラム症の受身性の研究から

  • 第3章 なぜ自閉スペクトラム症の受身性に注目するのか?
  •  第1節 療育や特別支援では手が届きにくいという性質
  •  第2節 受身グループは自閉スペクトラム症といえるのか?
  •  第3節 なぜ受身性は問題ないと軽くみられてきたのか?
  •  第4節 受身性は放っておくと思春期以降の精神疾患につながる?
  •  第5節 子どもの頃の受身性の現れ方:指示待ち
  •  第6節 受身性の定義と他者との関係の影響
  • 第4章 受身性が発達していく過程:ある家族の物語から
  •  第1節 受身性がどう発達するか知るための最初のステップ
  •  第2節 Bと家族の物語:出産,診断,療育,就学まで
  •  第3節 小学校入学から低学年:能力の伸びから固定化した習慣へ
  •  第4節 小学校高学年時代:気付かれなかった“いじめ”
  •  第5節 中学校時代:一人でやりたいことが何もない
  •  第6節 その後,青年となったB
  • 第5章 「うちの子に受身性など関係ない」といえるのか?
  •  第1節 受身性は変化する:インタビューから得られた知見
  •  第2節 「できるようになる=受身になる」という独特さ
  •  第3節 受身的な自閉スペクトラム症を抱える子どもはどのぐらいいるのか?
  •  第4節 どのような人が受身的になりやすいのか?
  •  第5節 結局のところ受身性はよいのか悪いのか?
  • 第6章 受身性の3水準モデルと「自分」の生まれ方
  •  第1節 結局,受身性はどこから生じるのか?
  •  第2節 「空の自己」概念と自己感の乏しさ
  •  第3節 「自分がない」の水準:隠れている?本当にない?
  •  第4節 脳科学が教えてくれる「自分」の生まれ方
  •  第5節 受身性の3水準モデル:1つの地図として
  •  第6節 「他者」と「自分」のバランスの問題という結論:自閉の利点と脳の多様性という視点

第2部 自閉スペクトラム症を抱える人に心理療法ができること

  • 第7章 健全なコミュニケーションと自分と他者のバランス:精神分析的心理療法の考えから
  •  第1節 自閉スペクトラム症を抱える人の主観的な体験を知る方法
  •  第2節 精神分析的心理療法は自分自身に気付くための方法
  •  第3節 赤ちゃんでも主体的で能動的な存在と見るスタンス:クラインと自閉スペクトラム症の出会い
  •  第4節 相手に自分の気持ちを伝えるための方法:投影同一化
  •  第5節 自分と他者のバランスをとるための緩衝材:心的空間
  •  第6節 心的空間の発達:心と身体の区別,空想と現実の区別
  • 第8章 身体がまとまりを得ることとその利点:赤ちゃんの観察から
  •  第1節 初回の観察とタビストック方式乳児観察の特徴
  •  第2節 身体のまとまらなさ,宙を漂うような状態:志向性の乏しさ
  •  第3節 自分の身体が何かに届き,影響を及ぼせる感覚:身体水準の効力感
  •  第4節 親の対応:積極的に働きかけるか?待つのがいいか?
  •  第5節 身体は人間関係を理解するための劇場:象徴の精神分析的理解
  •  第6節 志向性の乏しさの残骸:パターンの崩れへの脆弱性と身体がばらばらになる体験
  • 第9章 子どもの心理療法はどう始まって,どう進むの?
  •  第1節 精神分析的心理療法と自閉スペクトラム症の不幸な出会いから再会へ
  •  第2節 心理療法のよくある流れ
  •  第3節 なぜ母子並行面接を行うのか?親は邪魔なのか?
  •  第4節 心理療法は子どもの主観にどう迫るか
  •  第5節 心理療法はもっと柔軟にやってほしいという批判について
  • 第10章 子どもの意志に居場所を与える:Aとの心理療法1年目
  •  第1節 Aの問題の再確認と心理療法の導入
  •  第2節 心を変えてしまうことをめぐるジレンマ
  •  第3節 意志だけに注目したシンプルな介入:考えの単線化
  •  第4節 動機の高まりは嫉妬を生じさせる:セラピストの不在への反応
  •  第5節 相手がもろくて傷つきやすいから好奇心・怒りを向けられない
  •  第6節 まとめ:志向性を保証する関わりと新たな問題
  • 第11章 出てきた意志を消さないために:Aとの心理療法の小学校卒業まで
  •  第1節 壊れない生きている人間を提示する介入:父性に支えられた母性
  •  第2節 相手の心の中に嫌な気持ちを入れても大丈夫:心の境界線
  •  第3節 心理療法に伴う家族関係の変化と親の心の中の両親イメージ
  •  第4節 「かもしれない」を使えること:心の中でのシミュレーション
  •  第5節 時間は悲惨さだけをもたらすわけではない:壊れても直る対象
  •  第6節 中学に上がることを想像し,備えること
  •  第7節 まとめ:人を大切だと思うために欠かせないこと
  • 第12章 自分に知らんふりをするのをやめる:Aとの心理療法の中学校時
  •  第1節 自分に知らんふりをしていること
  •  第2節 思春期のエネルギーの高まりと周りが見えるようになる成長
  •  第3節 子どもの自己否定は必ずしもマイナスか?
  •  第4節 思春期を生き延びるための投影:自分のせい,相手のせい,規則のせい?
  •  第5節 自分だけが持っている記憶:主観が存在すること
  •  第6節 別れの感情に知らんふりせず向き合うこと:歴史を持つ自分になる
  •  第7節 その後のA
  • 第13章 子どもの障害受容って簡単にできるの?
  •  第1節 子どもの障害受容と親の苦悩
  •  第2節 親の人生という文脈で障害受容を考える
  •  第3節 Aの両親面接のその後:障害受容が強める夫婦の不和
  •  第4節 親自身が育ってきた経験の影響:Aの母親
  •  第5節 まとめ:Aの母親の障害受容のらせん
  • 第14章 家出・放浪をした青年期男性の心理療法:他者からの操作か社会性の発達か?
  •  第1節 この青年の受身的な特徴
  •  第2節 なぜ家に帰ってこれなくなったのか?:放浪について
  •  第3節 自分は何かに操作されていると感じる青年とどう会うか?
  •  第4節 自分の受身性に気付き,「バーチャル」と名付ける
  •  第5節 精神疾患に関する再検討:統合失調症?緊張病?
  •  第6節 思い通りにいかなさを抱えながら社会に出ることを目指す
  •  第7節 セラピストとの別れと自分を客観的に意味付けられること
  •  第8節 まとめ:青年期のリスクと心理療法

おわりに

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