「第二版」への監訳者あとがき

 先に金剛出版社より,『自尊心を育てるワークブック:The Self Esteem Workbook』 (初版)を翻訳出版したが,本書は,その初版につづく第二版の翻訳書である。初版に続いて本書(第二版)を翻訳したのは,初版を翻訳したときに興味ある面白い本だと恩ったことにある。その後,米国で『第二版』が出版され,本書(第二版)の翻訳をしたが,この二版も初版同様興味あるものであった。特に以下に挙げるような二版の特色は興味を引くもので,あった。

1.本書は,認知・行動療法の立場からの「健全な自尊心の形成」のためのワークブックであるが,その「まえがき」にあるように,初版発行後も著者は関連分野の研究動向に注目しながら,それらの研究にみる実証的な根拠のもとに,初版に加筆・修正を積み重ねて書きあげた力作であり,その内容は初版をさらに質,量ともに凌駕した充実した内容のものである。

2.本書は,認知・行動療法の立場から自尊心を構成する諸要因を具体的に捉えなおし,そこから「健全な自尊心の形成」に資する具体的な治療手法を実証的に検証しようとする興味ある内容である。自尊心に関して,このような認知・行動療法からのアプローチの在り方は,今後の臨床研究,臨床実践に一石を投じることが期待される。

3.本書に目を通すと分かることだが,本書の内容は非常に具体的,実践的で面白く,理解しやすい。しかも本書による治療実践は,専門家に頼らずとも自学自習により実施可能なものである。
このことは,しばしば治療の障害になるクライエントの経済的,地理的,時間的な問題等の解決策ともなろう。また自尊心の問題のように自己開示しづらい心理的に微妙な問題に取り組む場合にもメリットとなる。これらのこと以上に自律的な自助治療等の習得こそは,これからの医療が目指す自己管理による医療につながるものである。

4.本書は,先にも述べたように「健全な自尊心」の形成について認知・行動療法の立場から編纂されたワークブックである。よって本書にあるワークを繰り返し実践することで,認知・行動療法の理論的な考え方や,治療技法等も自然に習得されよう。したがって,あまり構えずに気楽に認知・行動療法を学びたいという読者には,本書はその入門書の一冊ともなろう。

5.最後に初版にはないが,本書(第二版)にあるcontentsで注目したいものに「セルフコンパッション(self-compassion)がある。これは「健全な自尊心の形成」にとって礎となる重要な要因とされ,最近注目されているものである。
 ただ,現在のところ我が国で広く馴染みのあるところまでには至ってはいない。だが,コンパッションについては今後,我が国でも自尊心の研究をめぐって重要な概念として関心が向けられよう。

 以上,第二版(本書)について初版とも比較しながら,監訳者なりに本書の内容で興味をもったところを述べてきたが,本書は非常に豊富な内容を持つだけに,当然,読者が本書に目を通すと,またそこには異なる見方があろう。したがって,ここに取り挙げたことは,読者が本書に目を通されるときの参考になれば幸いである。
 参考までに本書に対する読者の評価であるが,自尊心を維持し高めるための基本図書として全米で80万部にもおよぶ発行部数をみているベストセラー書である。
 おわりに本書の翻訳出版にあたって立石正信氏(金剛出版代表取締役)に大変なご助成を頂きました。心から謝意を表する次第です。
 また第二版翻訳にあたられた柳沢圭子氏にも厚くお礼を申し上げます。

2018年8月
監訳者 高山 巌