Cyclical Psychodynamics and the Contexutal Self : The Inner World, the Intimate World, and the World of Culture and Society

ポール・ワクテル著/杉原保史監訳/浅田裕子,今井たよか訳

統合的心理療法と関係精神分析の接点−循環的心理力動論と文脈的自己

A5判 352頁 定価(本体5,000円+税) 2019年3月刊




ISBN978-4-7724-1685-6

 ポール・ワクテル自らが,さまざまなところで発表してきた論文を,加筆修正の上,編集した論文集である。
 長年にわたって心理療法の統合運動を牽引してきた,現代心理療法を代表する理論家であり,イノベーターであるワクテルは,精神分析,行動療法,システム論的心理療法などの多様な心理療法の理論的基礎を検討する作業を通して,循環的心理力動アプローチという統合的な心理療法を提唱するとともに,多くの著作を通して心理療法とパーソナリティについての独自の考えを発表してきた。本書は,その考えをコンパクトに伝える良書である。
 2部構成の本書は,第1部では心理療法に関する議論を扱い,第2部では社会問題を扱っている。なかでも第2部に収められている諸論文は,精神分析的な社会批評,すなわち循環的心理力動論による社会問題の分析をテーマとしたもので,日本の心理臨床関係の読者にとって,かなり新鮮なものとなるだろう。 それぞれの章は独立しているので,読者は,興味がある章から読み進めることができる。
 ポール・ワクテルの論考は,われわれが自らの社会を振り返る上で助けになるだろう。

おもな目次

日本語版への序文
本書について
著者について
謝辞

第1部 心理療法,人格力動,間主観性の世界

  • 第1章 循環的心理力動論――統合的で関係論的な視点
  • 第2章 よいニュース〓少し小さく→〓「人生を混乱させるためには共犯者が必要だ」〓悪いニュース〓少し小さく→〓「共犯者は簡単にリクルートできる」〓
  • 第3章 内的世界と外的世界,両者を結ぶ行動
  • 第4章 精神分析と心理療法における愛着―トゥー・パーソン的で循環的心理力動的なアプローチ
  • 第5章 表層と深層――精神分析における深層のメタファーの再検討
  • 第6章 抑圧,解離,自己受容――無意識の意識化という考えの再検討
  • 第7章 積極的介入,精神構造,転移の分析
  • 第8章 パンサーを取り入れる――臨床的により継ぎ目のない治療実践の統合に向けて
  • 第9章 抵抗について考える――感情,認知,修正情動体験
  • 第10章 「精神分析の訓練は精神分析家になる訓練」でいいのか?
  • 第11章 精神分析の認識論的基礎――科学,解釈学,敵対的議論の悪循環

第2部 人種,社会階層,貪欲,そして社会的に構成される欲望

  • 第12章 精神分析と文化的構成の世界――文脈的自己と日常的な不幸の領域
  • 第13章 物質的には豊かでも虚しい人生――現代文化の貪欲の探究
  • 第14章 個人的ならびに社会的現象としての貪欲
  • 第15章 人種と社会階層の問題――精神分析と心理療法の寄与
  • 第16章 人種差別の悪循環――人種と人種関係についての循環的心理力動論の視点

監訳者あとがき