反省堂書店

精神療法第36巻第6号 特集:精神病理学と精神療法
2010年12月発行
★4の上

■2010年12月発行 <特集:精神病理学と精神療法:精神病理は精神療法に寄与するか> とんでもなく難解な論考ばかりが6本並んでいる。どの著者も論考のはじめに「精神病理学」と「精神療法」の二語を厳密に定義することを試みている。まず,大前晋氏は「精神病理学」以前に「病理学」の定義を確認している。すなわち,「病理学」とは,身体的な病変を直接観察することで病気の本質を知る学問である。じかに観察することのできない「精神の」病理学とは,患者の身なり,振る舞い,動作,陳述などを記述し,症状に名前をつけ,診断する学問である。これに対し「精神療法」の第一目標は「治療」である。このように述べると精神病理学と「精神療法」は反目しているように受け取られるかもしれないが,精神病理学はおのずから治療的でなければならないし(内海健),基本的に精神医学の領域の一つとして治療に貢献するものでなくてはならない(林直樹)。本特集では,精神病理学が統合失調症,うつ病,境界例,神経症,てんかんの精神療法にどのように寄与するか論じられている。その中にはDSMへの批判も散見される。うつ病診療の基本は症状の把握であり,症状の記述が生命線である。DSMのようなチェックリスト型の問診では拾い損ねる症状があり不十分である(内海健)。DSMの疾患概念は統計用や研究用にはなりえても,臨床用の診断基準にはなりえない(鈴木茂)。