反省堂書店

精神療法 Vol.371(2011)
金剛出版
販売価格:1,890円
★5つ

 <特集:認知行動療法の最前線>
 わが国では,2010年より認知行動療法(CBT)が気分障害に対して保険適用が認められた。また,医療界だけでなく教育界や産業界でもCBTのニーズは急増している。しかし,この社会全体のニーズを安全で確実に提供できる実践家があまりにも少ないと,伊藤絵美氏は指摘する。こうしたわが国の“今”のニーズにどのように応えていくかを社会制度面から論じているのが本特集である。表題に「最前線」と冠されているが,CBTの新しい学術的な知見を大々的に扱っている論考は10本のうち2本である。
 清水栄司氏らは,CBTのために,CBTを提供できるセラピストを「認知行動療法士」として,医育機関の博士課程で養成すべきであると提言している。そして,英国のシステムをモデルとした千葉大学認知行動療法士トレーニングコースのカリキュラムが示されている。
 また,精神科入院病棟に入院中の患者に対しては,看護師が強力なCBTの担い手となり得ると,症例をあげて三上勇気氏は強調する。なぜなら,医師や臨床心理士は面接時しか患者の行動を観察していないが,看護師は24時間体制で観察しており,適切なときに即適切な介入ができるからである。
 EBMがニーズの増加と高質化の医療の領域で強く求められる昨今,CBTは根拠に基づく精神療法の代表格として扱われることが多い。しかし,統計学を用いて検討すると,ただの数字のマジックに騙されていることが少なくないと,本特集は読者にしっかり釘を刺すのを忘れていない。