反省堂書店

精神療法 Vol.372(2011)
金剛出版
販売価格:1,890円
★4の中

 <特集:自閉症スペクトラム障害の学生相談>
 近年,自閉症スペクトラム障害(ASD)とされている(またはその疑いのある)学生への対応が各大学で問題となっている。2009年度に行われた日本学生支援機構の調査によると,大学に在籍している学生の0.2パーセントが発達障害を持つ学生で,このうち約75パーセントがASDを持つ学生である。
 学生相談室を訪れるASDを持つ学生の相談内容で多いのは,対人関係がうまくいかない。学業上の問題,不登校や休学,進路の問題などである。さらに生き生きとした相談の例として,履修届の出し方がわからない,実習や演習への参加ができない,休み時間の過ごし方がわからないなどがあげられている。しかし現時点では,各大学の学生相談室にはこれらのASDを持つ学生の相談に対応できるノウハウが十分に備わっているとは言い難い。これには二つの原因が考えられる。第一に,従来からの来談者中心のカウンセリングでは,ASDを持つ学生をかえって混乱させてしまうからである。第二に,学生本人も保護者もASDと診断されることに強い抵抗感を抱いており,支援に必要な発達歴・生活歴などの情報を聴取できないからである。
 本特集では,このようなASDの学生相談の現状と課題を山崎晃資氏が概説し,その後国公立・私立,総合大学・単科大学など様々な10校における学生相談室の取り組みが紹介されている。しかし,ここで安易にその大学名を列挙することはあえてしない。10本の論考を一読したところ,小規模な大学の方がきめの細かい支援体制が整えやすいという印象を受けた。総合大学の中には,ASDの支援を受けるために診断書が必要な大学も存在する。
 本特集を読めば,ASDの学生相談のみならず,青年期ASD像が見えてくる。ただ,いろいろ理論的なことが陳述されているのはとても勉強になるが,「学生相談」という特集名を忠実に反映し,各大学の地道な取り組みを報告することに徹していただきたかった。