松本俊彦編

『臨床心理学』増刊第8号
やさしいみんなのアディクション

B5判 200頁 定価(本体2,400円+税) 2016年8月刊


 
 

ISBN978-4-7724-1504-0

 監獄法改正以降、刑事施設や少年施設で薬物再乱用防止プログラムも開始されつつある今日、アディクション領域への専門家参入ニーズはかつてなく高まっている。しかし、「やめられないとまらない」アディクションに治療薬はなく、まして精神論も根性論は毒にも薬にもならない。ならば臨床家はどうすればいいのか?――「わかっちゃいるけどやめられない」アディクションからの回復に残される希望、それは心理−社会的アプローチにあり、人と人との関係にある。

 高まる専門家参入ニーズを受けて編纂された本特集、前半部では、松本俊彦+藤岡淳子+熊谷晋一郎の鼎談「アディクションとは何か?」から、ベテラン臨床家たちが個人史とともにアディクション臨床を語るセクション「アディクション臨床への誘い」、「脳の病」「不適切な学習の結果」「自己治療」「関係性の病」などアディクションの多面性を考えるセクション「アディクションとは何か?」、アディクションを基礎から学ぶセクション「アディクションの医学的基礎知識」まで、アディクションの基礎知識をゼロから学んでいく。
 現場で活躍する執筆陣が援助の実態を語る後半部は、臨床家たちの体験知から生まれたセクション「治療・援助の実際」、当事者家族もまた癒し癒される存在となるアディクション臨床の特徴を描いたセクション「アディクションの家族支援」、そして松本俊彦+田代まさしの対談「回復へのターニングポイントは何だったのか?」まで、読み応え十分な臨床レポートが満載。
 「思弁的ではなく実際的な内容」「深掘りをするのではなく広く浅く」「わかりやすい端的な表現」で書かれた、このうえなくわかりやすいアディクションアプローチ・ガイド!

おもな目次

1−はじめに

  • 心理士よ,アディクション臨床に来たれ!/松本俊彦

2−アディクション臨床への誘い

  • アディクションと精神科医療/信田さよ子
  • ここが面白いアディクション臨床――ローズカフェの経験から/伊藤絵美
  • 私はこうしてアディクション臨床にハマった/奥田由子

3−アディクションとは何か?

  • 鼎談 アディクション臨床の本質とは何か?――アディクション・加害者臨床・当事者研究/松本俊彦・藤岡淳子・熊谷晋一郎
  • 脳の病としてのアディクション/舩田正彦
  • 不適切な学習の結果としてのアディクション/蒲生裕司
  • 自己治療としてのアディクション/松本俊彦
  • 関係性の病としてのアディクション/水澤都加佐

4−心理士に知っておいてほしいアディクションの医学的基礎知識

  • 依存症とはどんな病気か?――完治しないが回復できる病/合川勇三
  • アルコール依存症患者の予後/木村 充
  • 薬物依存症患者の予後/谷渕由布子
  • 処方薬依存のクライエントにはここに注意/村山昌暢
  • 危険ドラッグとは何か?/谷渕由布子
  • 市販薬にも安心できないものがある/嶋根卓也
  • 物質依存症と嗜癖行動の共通点と相違点/河本泰信
  • アルコールに関連する肝機能障害と癌/横山 顕
  • アルコールによる脳の障害/松下幸生
  • 覚せい剤と感染症――C型肝炎とHIV 感染症/船田大輔

5−治療・援助の実際

  • 依存症のクライエントと向き合う際の心得/成瀬暢也
  • 酔っているクライアントにどうかかわるか?/奥田由子
  • 「俺は依存症じゃない」と言い張る――クライエントにどう対応するか?/澤山 透
  • 断酒を拒むクライエントにどう対応するか?/武藤岳夫
  • 「大麻(マリファナ)は安全」と主張するクライエントにどう対応したらよいか?/松本俊彦
  • 再飲酒・再使用したクライエントは叱るべき?/奥田由子
  • 覚せい剤使用を告白されたらどうしたらいいか?――警察通報か治療か/船田大輔
  • 「怖い」クライエントにどう対処する?/角南隆史
  • 回復には「底つき体験」が絶対に必要なのか?/武藤岳夫
  • 回復のために必要なものは?――正直さと援助関係の継続性/米澤雅子
  • 渇望が生じるきっかけ――『引き金』について/網干 舞
  • HALTって何?――渇望が高まる危険な状況/川地 拓
  • ドライドランクと依存症的行動/今村扶美
  • 渇望に襲われたらどうすればいいの?――引き金と対処,スケジュール/高野歩
  • 断酒のための3 本柱って何?/真栄里仁・松下幸生・樋口 進・大槻 元
  • アルコール依存症等のアディクションに対する薬物療法――抗酒剤と抗渇望薬/真栄里仁・松下幸生・樋口 進
  • アディクション治療環境の選択――外来治療か,入院治療か,民間リハビリ施設か?/長 徹二
  • 民間リハビリ施設はなぜ「効く」のか?――治療共同体の力/引土絵未
  • 自助グループはなぜ「効く」のか?/加藤 隆
  • SMARPPとはどのような治療法か?/今村扶美
  • GTMACKとはどのような治療法か?/中山秀紀
  • HAPPYとはどのような治療法か?/杠 岳文
  • 12ステップとリカバリー・ダイナミクス/中山 進
  • 重複障害(併存性障害)事例への介入ポイント/池田朋広
  • クロスアディクション事例とどうかかわるか?/松本俊彦
  • アディクション治療が先か,トラウマ治療が先か?/森田展彰
  • 女性とアディクション――ジェンダーの視点から現象をみる/大嶋栄子
  • 性的マイノリティーとアディクション/中山雅博
  • 回復途上の恋愛にはどんな危険があるのか?――ステップ13/中山 進
  • 自助グループへの参加を渋るクライエントへの促し方/岡崎重人
  • お金がないと訴えるクライエントをどう援助するか?――治療・援助の実際/若林朝子
  • 住む場所のないクライエントはどうしたらよいか?/小河原大輔

6−アディクションの家族支援

  • アディクション支援における債務処理/稲村 厚
  • アディクション臨床ではなぜ家族支援が大切なのか?/近藤あゆみ
  • 家族の説教や叱責は効果があるの?/谷合知子
  • 境界線を引くこと,イネイブリングをやめること/近藤あゆみ
  • 家族は本人を24 時間監視すべきなのか?/近藤あゆみ
  • 本人の暴力にどう対応するか?/高橋郁絵
  • 家族は治療を拒む本人にどうかかわったらよいのか?/吉田精次
  • 別居や世帯分離をすべきなのはどんなときか?/谷合知子
  • CRAFTとは何か?/吉田精次
  • アディクション問題の与える子どもへの影響/森田展彰

7−さまざまなアディクション

  • ギャンブル障害の理解と援助/河本泰信
  • 摂食障害に対するアディクション・アプローチ/武田 綾
  • インターネット依存――その理解と援助/三原聡子
  • クレプトマニア(窃盗症)の理解と援助/竹村道夫
  • 買い物依存の理解と援助/西村優里
  • ドメスティックバイオレンス(DV)の理解と援助/高橋郁絵
  • 性依存症――逸脱した性的嗜癖行動への治療的アプローチ/斉藤章佳
  • アディクションとしての自傷/松本俊彦

8−回復とその後

  • その後の不自由――アディクションを手放した後の生きづらさ/上岡陽江
  • 対談 回復へのターニングポイントは何だったのか?――アディクション・リカバリー・サバイバル/松本俊彦・田代まさし