改訂版へのあとがき

 15年前に書いた本書の初版がまだ読まれているらしく,書肆から改訂版を出すことを勧められた。著者としてありがたいことである。改訂のため久しぶりに自分の文書を再読して,夢中で患者と取り組んでいた頃を思い出し,なつかしく感じた。主として自分の経験を報告しているので,改めるところはそれほど多くはなかったが,第一章の(一)境界例の概念のところに,最近関心を呼んでいる外傷説を含む近年の諸研究を私なりに整理してつけ加えた。境界例研究の現在までの動向を概観していただくのに役立つかと思う。また第五章精神療法「覚え書き」の後半部分に,初版執筆以降私の気がついたところをつけ加え,さらに近年みられる探究と支持の統合への試みをいくつか紹介し,最近のわれわれの見解をも述べた。
 境界例の研究はその最盛期を過ぎたかもしれないが,境界例の患者はますます増加しているようにみえる。そういう患者と日々取り組んでいる臨床家の方々に読んでいただければうれしい。
……(後略)

成田善弘