「いける! 基礎研究」とは?

長谷川 啓三(東北大学)

 靴箱に嫌がらせの手紙を入れられる女子が相談に来た。どうしたらよいか。対応は複数あると思うが,家族援助から始まった基礎的な「コミュニケーション研究」の枠組みからは,手紙そのもの/テキストとそれが置かれる上位文脈/コンテキストから生成される「意味」によって受け手の行動が「拘束」される,と考える。そこで文脈側を変えてみる。 しばらく担任の靴箱と交換し,その後,元へ戻した。すると問題は軽減した。──こんな事例を支える基礎研究の流れが存在する。当初,分裂病を説明するものとして提出された「二重拘束理論」以来の比較的大きな流れです。
 新雑誌に込めたい抱負はそんな「臨床に役立つ基礎研究」の在り方を模索できる場であることです。「解決」は部分的には既に存在します。行動療法が元来,基礎と密接ですし,ユングの連想実験も「基礎の目」で見直してみると実に示唆に富む。家族援助では上に言ったとおりです。紹介の機会やそもそもの需要と期待が臨床側になかっただけという面があります。基礎への不信です。基礎側も同じ思い。
「臨床心理学科」が「心理学科」から自立できるようになった現在,臨床に役立つ「いける! 基礎研究」は重要になるはず。そんな未来をリードできる新雑誌を期待します。