本誌の役割について思うこと

弘中 正美(千葉大学)

 心理臨床の仕事は、いま活況を呈している。少なくとも,心理臨床の専門家を憧れて大学に集まってくる多くの若者の姿を見ている大学人としては,そのような感慨を持ってしまう。活況という言葉が生臭いとすれば,社会の注目を集めているでもよい。
 しかし,心理臨床の世界は,本来は裏の世界であり,あまり華々しく取り上げられるべきものではないと思う。現代の我々の心のなかにある,何かしら虚ろで不安定なものが,我々を駆り立てて,心理臨床の仕事に対する期待と関心を大きくさせるのであろう。
 心理臨床の仕事は,単に時代の流れに乗るのではなく,地に足が着いた形で社会に定着しなければならない。そのためには,それなりの対社会的なメッセージをコンスタントに発信することが求められるであろう。このたび企画された本誌は,そのような役割を果たすことをめざしていると思う。お洒落ではないが,味わいのある,等身大の心理臨床の姿を描き続ける雑誌に成長することを切に願っている。