現実味のある専門誌の誕生に向けて

大野 博之(九州大学)

 急速に変貌する時代背景のもとに,“心の専門家”としての臨床心理士への社会的期待は高まるばかりである。しかし,我国では,学会認定の性格を有する資格制度が誕生して十数年を経過したに過ぎず,国家資格制度に移行するまでに至っていない。第一線で仕事をしている臨床心理士にとって,その制度を確立することは専門家としての立場を確保することであり,社会的責任を果たすという意味でも重要なことである。制度上の問題を抱えながら,その職責を全うするために,専門知識の修得や実践経験の蓄積のために日々努力が重ねられている。目の前で起こっている様々な問題は,既成の学問や方法のみで対応するのは困難であることも事実である。広い視野からの新しい取り組みも必要であり,心理臨床学の学問領域を充実させることが不可欠である。日常の問題解決に向けて現実味のある対応をするために本誌がその役割の一端を担うことができればと願うものである。